交響曲第2番「小ロシア」⑤・チャイコフスキーに憧れる五人組
チャイコフスキーへのロシア五人組の好評
ロシア五人組をはじめ、
多くの注目と歓声が集まりました。
「ロシア五人組」にとって『小ロシア』が好もしく映ったのは、
特に両端楽章において、ロシアの民俗音楽の独特な特徴に交響曲の形を決めさせるというチャイコフスキーの手法でした。
そのなかで表現をすることが伝統的でした。
それに反発していたのが、ロシア五人組です。
彼らは、交響曲の形式さえも
ロシア流を生み出していこう!という考え方を持っていました。
で、
これがなかなかできることではない。
苦闘に苦闘を重ねて、
ようやくなにかやり方がつかめてきたように思われたそのとき、
いとも簡単にそれをやってのける作曲家が出てきました。
それがチャイコフスキーだったというわけです。
評論家の批判もなんのその
このチャイコフスキーの手法は
欠陥があるのではないかと主張した人もいました。
「(民謡が)チャイコフスキーの作曲様式に持ち込まれ、
ほとんど儀式めいたしつこさで同じような音程やフレーズを使うことで、
躍動感や意図にかなうような効果よりも、
むしろ静的な印象を産み出しているという特別な問題は、
民謡そのものの性質に結びついている。
事実旋律は、それ自体が一連の変奏めいたものになりがちで、展開や対比よりもむしろ転調によって進行してゆく。
つまり、これは明らかに交響的な展開にはなじまないということである。」
伝記作家ジョン・ウォーロック
民謡をつかうとしつこくなるから、
交響曲にはそのしつこさは合わないよ
という批判です。
これがドイツの並みの作曲家であれば、
ひれ伏したでしょうが、チャイコフスキーの天才性の前には無意味でした。
チャイコフスキーのロシア音楽・必勝法
評論家の指摘した欠点さえも自分の持ち味にとりこんでいました。
その伝記作家の評価です。
「何回もの繰り返しに乗って進行していくような楽曲構成には避けられない欠点は、チャイコフスキーにとっては何ら問題ではなかった。
なぜならチャイコフスキーは、
それまでのすべての最も重要な交響楽の楽章において、
第1主題を閉じようとして、
それが始まったときとそっくりそのままの姿で使うことを
習慣としていたからである。」
つまり、
民謡を使うんだから繰り返しとかがあってなんぼじゃん!!
それに合う形式でおれは楽曲をつくっとんじゃい!!
ということです。
自然にその手法にたどり着くことができたのは
この時点では世界でただひとりチャイコフスキーだけでした。
いかに天才だったかわかりますね。
ロシア五人組とチャイコフスキーの親交
これをきっかけに
さらに仲を深めていきます。